さて、前回の記事からの続きです。
あらすじ
仏教はお釈迦様によってインドで発祥し、入滅する80歳までお弟子さんたちと一緒に仏教を伝えました。
その後、国を挙げて多くの仏教寺院まで建立される大ブームを巻き起こします。
しかし、インドで発祥し隆盛を極めたと言われる仏教ですが、現在のインド人とは全く繋がりません。
一体何が起こったのでしょうか?
唐の都長安から本場で仏教をやることに厚く燃えた西遊記でお馴染みの玄奘三蔵法師。
飛行機のない時代の危険な旅。
長い年月を経て命がけでたどり着いたインドは大変なことになっていました・・・
仏教の衰退
お釈迦様の誕生から絶頂期まで仏教は1000年も隆盛を極めましたが、現在のインドでは国民の8割がヒンドゥ教とで、肝心な仏教徒の数はわずか1%程度。
遠く離れた日本では9割の国民が仏教徒であるのに、本場、元祖のインドでなぜそんなことになっているのでしょうか?
最も仏教がイケイケだったのは紀元前3世紀ごろ。
インド史上最大の国を築いたアショーカ王が、仏教を深く信仰し、第3回結集を行いました。
そして1世紀から北インドから中央アジアまで支配したカニシカ王も、仏教を引き続き保護しました。
仏教は発祥から1000年近くもインド地方では王様の御用達の宗教だったわけです。
ところが、西暦320年に北インドを支配したグプタ朝が身分制度を国の統治に利用するためバラモン教を取り入れます。
民衆にとって分かりやすい自然神崇拝。
さらに色んな宗教の要素を取り入れることで改宗感が薄く入り込みやすい。
ヒンドゥー教の凄い所は各宗派の神をキャラとして取り入れることでまるでプロ野球のオールスター状態ですね。
今でもインド人の8割以上はヒンドゥ教徒であることを考えると非常に戦略的な宗教改革だったと言えます。

僧侶のつぶやき
インドでヒンドゥ教を作った人恐るべし
時を経て今でもインドで最も勢力を誇る宗教であり続け、敵を作らずお釈迦様までも仲間に引き込む手腕はビジネスの世界にも応用が効く気がする・・・ https://t.co/spWCm4onPl— TomFu (@TomFu83622412) June 26, 2021
三蔵法師が仏教の本場インドへ行ってみると・・・
ちなみに西遊記でお馴染みの三蔵法師が中国の長安を出発したのが629年。
その頃の唐の国では個人が国外へ出るのを固く禁じていたので命がけでコッソリと出ました。
サルと河童と豚をつれて妖怪と闘いながら天竺を目指す冒険はのちに弟子たちが読み物として面白く作ったものです。
飛行機や電車の無い時代。
一体何年かかったのでしょか?
命がけで彼を突き動すモチベーションに興味があります。
当時のインドはヴァルダナ朝のハルシャ王の時代でヒンドゥー全盛期。
今更仏教?と今風にいえばオワコン扱いされる中でしたが、せっかく来たのでナーランダー僧院というところで5年間も仏典の研究を行いました。
僧侶のつぶやき
西遊記でお馴染みの三蔵法師が本場で仏教を学ぼうと天竺へ旅だった。飛行機のない時代。7年もの歳月をかけて決死の想いで辿り着いてみたら、本場インドでは既に仏教は衰退し、ヒンドゥ教全盛期だったというオチはあまり話題にされない・・・
— TomFu (@TomFu83622412) June 25, 2021
そしてようやく中国へ。
仏典を沢山背負い岐路につき645年に長安へ到着。
現地にいたのが5年でトータル17年経過しているので移動に12年かかったということでしょうか?
途中で何度も山賊に襲われたりしながらの旅だったので命がけの旅でありますね。
更にただ無断で国外へ出た人間が戻って来て大丈夫だったのでしょうか?
日本だと直ぐに打ち首みたいなイメージがありますけどね。
三蔵法師が決死の覚悟でインドへ行き、仏典の研究を重ねそれを持ち帰った有難いお話。
トムが気になるのは、中国人がいきなりインドへ行って言葉は通じたのでしょうか?
今みたいにネットでグーグル翻訳なんてできないし、かなり謎です。
つまり、日本の仏教は三蔵法師を始め中国で独自の発展を遂げ、本家のインド仏教の衰退は全く関係ないという流れを作ります。
インド仏教が衰退した要因を整理
三蔵法師の訪印後、インドは別の王朝が乱立ししばらく無政府状態で混乱しましたが、8世紀に入るとインドの北東部にパーラ朝が起こり、歴代の王が仏教に帰依し、保護されます。
ここで仏教が再び盛り返すのかと思いきや、10世紀以降、イスラム教がインドに入って来て仏教寺院を含め破壊されます。
多くの僧侶は殺され、生き残った者たちはネパールやチベットに逃げました。
仏教は、アジア各地に広まる一方、インドでは5世紀ごろから衰退。
- 僧侶を支えたスポンサー(商工業主)の弱体化。
- バラモン教が宗教改革を起こし最強のヒンドゥ教へと変貌し仏教を攻撃。
- 中央アジアからイスラム勢力が侵入して多くの仏像や寺を破壊された。
現在のインド
仏教といえばお釈迦様。
しかし、お釈迦様の顔や仏像たちの顔があまりにも東洋風なのでインド人だったというと「え?」となってしまいそうです。
インド人と仏教のイメージが結びつかないのも無理はありませんね。
なぜなら現在のインドの宗教分布では全国民のわずか0.7%しか仏教徒はいませんので・・・
- ヒンドゥー教 79.8%
- イスラム教 14.2%
- キリスト教 2.3%
- シク教 1.7%
- 仏教 0.7%
- ジャイナ教 0.4%
僧侶トリビア
現在のインドの宗教分布
ヒンドゥー教 79.8%
イスラム教 14.2%
キリスト教 2.3%
シク教 1.7%
仏教 0.7%
ジャイナ教 0.4%少数のジャイナ教徒がインドの富の50%を所有しているおり税金の24%を納めているという
— TomFu (@TomFu83622412) June 26, 2021
現在のインドで仏教はかなりマイナーなのはヒンドゥ教の一神としてお釈迦様の存在が吸収され、上手く収められた格好になっています。
インドから中国へ伝わり独自に発展した仏教ですが、その中国でも現在仏教はマイナーなんです。
次回はこの中国仏教の衰退の謎について明らかにしてみたいと思います。