僧侶のつぶやき

釈迦の知恵「反応しない練習」(2)|モヤモヤしたストレスの正体を解き明かす

最強の心理武装「仏教マインド」

 前回からの続き

指南3 他人に期待しないようにする

ここまで、悩みの原因を知り、それを受け入れるそのためには発端になっている欲求の存在を知る必要がありましたね。 現状を認識し理解することで悩みが軽くなるということも分かりました。 ではここで、もう一つの悩みを解決する方法である「心を客観的に見つめるための部屋」について紹介したいと思います。 ここまで、人間の悩みは7種類で欲が引き起こしているということを明らかにしてきましたが、悩みはその状態によっても分類されます。 それは三毒と呼ばれる「貪欲」「怒り」「妄想」です。 これを部屋ということで収めてみましょう。
 
第一の部屋「貪欲」
第一の状態が収まる部屋が「貪欲」です。 これは過剰な欲求に駆られている状態であります。 人間の欲とは際限なく成長するように出来ています。 だからその欲求を満たすために努力をし社会が結果的に発展するのですが、同時に大きな苦しみを生みます。 焦りや人間関係をめぐるトラブルの大抵はこの貪欲さから来ています。 自分の貪欲さは他人を巻き込みます。 それに支配されると自分自身が苦しく、関わる相手も不幸にしてしまいます。 あなたは相手に求めすぎていませんか?
第二の部屋「怒り」
二つ目の部屋が「怒り」です。 これは不満不快を感じている状態です。 イライラ、機嫌が悪い、ストレスを感じている時がまさに怒りの状態です。 怒りは最も本能的、つまり動物的であると言えます。 生き残るためのエネルギーだともいえますね。 求める心に始まる人間の人生には怒りが潜在的につきまとっているものです。 しかし、人生が怒りによって乱されているという状況を冷静に観察できれば、その時点で随分と冷静になれるものです。 そのためにはまず、「その怒りが根拠のない怒り」であると一歩引いた距離から自覚することが大切なんです。 「私は怒りを感じているが、この怒りは求める心が作り出している根拠のない怒りである」といった感じで。 怒りは何かを失った哀しみでもあります。 鬼滅の刃でお馴染みの鬼は正に悲しみが怒りに変り鬼と呼ばれていますよね。 怒りと悲しみが同義語であることを知った瞬間に心の霧が晴れた人もいるのではないでしょうか? 過去への未練や後悔や挫折感を引きずっている人も怒りの人に成りえます。 また自己嫌悪やコンプレックスなどの心の重荷を背負っている人もそうです。 こうした怒りを放っておくのは人生において最も大事な人間関係を破壊してしまいます。 非常に勿体ないことです。 自分が怒っていると一歩引いた距離から観察する習慣をぜひ身に付けましょう。
第三の部屋「妄想」
最後が妄想の部屋です。
一般的に宗教では信じることで救われるという言い方がなされます。
しかし、仏教は宗教と違い、誰かや何かを信じろというスタンスではありません。
不確実なことは一切瞑想の部屋へとぶち込みます。
いくら自分の頭の中で強く信じていても、他人から見たらそれは一種に妄想に過ぎないことは多々あります。
人間は常に妄想活動を行います。 くよくよと常に後悔し、未来への余計な心配、他人や世間へのジャッジメント。
さらにSNSという現代社会の生んだ妄想培養システムのお陰でこの世は妄想で満ちています。 現実離れした妄想が「怒り」、「悲しみ」、「ストレス」といった典型的な苦しみの状態を生み出します。
妄想しない練習
三毒の中で最も謎のモヤモヤ感に繋がる悩みや苦しみが妄想です。
これこそが人間が最も好物とする毒です。
妄想を止めるにはその状態を一歩引いた距離から声や文字で表現してみることです。
スポーツの実況中継のような感じだといえば分かりやすいかもしれませんね。
しかし、やってみると難しい。
妄想は無意識の領域であることが多いので表現し辛いことが分かります。
だからこそやる意味があります。 座禅修行をしている僧侶もこれは実践している人が多いです。
今妄想しているをとらえる事。
妄想中と妄想以外の状態とを区別するというトレーニングが有効です。
草薙龍瞬さんの「反応しない練習」の中ではこんな感じで書かれています。
目を閉じて自分の手を見つめる 見つめながら上にあげる 手の感覚を意識する 手を元の場所に戻し感覚を意識する 掌を上に向け膝の上に置く 手を動かして感覚を意識する 体の感覚を見つめながら椅子から立ち上がって足の感覚を意識する こうして、日頃使っている体の感覚を意識しながら感じとる
目を閉じて目の前に見える暗がりに何かを記憶に残っているものを思い浮かべます。
昨夜たべたもの、インターネットで観た動画の一場面、テレビのニュースキャスターの顔。
そして目を開きます。 当然、さっきまで脳裏に浮かんでいた景色は存在しません。
妄想癖を消すにはまず自分の脳裏に浮かぶイメージの世界と現実のギャップを実感する練習が最適です。
そこからリアルな世界の認識へと進みます。
呼吸している時の鼻先を空気が出入りする感覚。
その際に肺や腹部が動く感覚を捉えます。
妄想と感覚の違いを峻別できるようになり、仏教が究極に目指す、今に集中する世界へ入ってきます。
この方法はストレスレベルを下げる「マインドフルネス瞑想」とほぼ同じアプローチなんですね。
それもそのはず、マインドフルネス瞑想は原始仏教の考え方が欧米に名前を変えたものなんです。
 

さいごに

さて、ここまで自分の悩みを分類し、自分の状態を観察しカテゴリー分けする意義について書いてきました。
自分の悩みやストレスの原因を分類する習慣を重ねることで悩みに反応し引きづられることがなくなってきます。
主観的な自分の心は自分からは見えません。
やり手のビジネスコンサルタントのプロの方が自分をコンサルできないのは正にそこです。
しかし、仏陀は人生を輝かしいものにするためには自分を客観的に見つめる意義と方法論を理論的に解きました。
自分で自分の事が見えづらい。 だから謎のモヤモヤした悩みに囚われている。 そういう事情が分かるだけでも大きく進歩します。
今の悩みは7つの欲のどこから来てますか? そして今の症状は3つの毒のどれにやられてますか?
心と体は一体です。
心が分からなければ体が感じる感覚を現実の世界とし認識し心の世界の霧を晴らしていきましょう。
トムのおすすめは足の裏が床に触れている感覚を意識することです。
これなら今この瞬間からスタートできますよね?
仏教では、心に苦しみがない状態を「幸せ」とみなします。
富や名声ではけしてありません。
今すぐ誰でも幸せになれます。
すべては心の中で完結できるからです。
幸せか不幸せかを決めるのは心の状態であると言えます。
まず、自分を一歩引いて観察し、妄想を廃除しましょう。
それだけで心の中は晴れやかになり健康で長生きします。
またこのサイクルは自分のみならず他人を幸せにします。
人間は判断されると傷つきます。 そして怒り(悲しみ)を感じます。
そして鬼なり、鬼が他人を食って鬼が繁殖します。
でも、もし誰かに理解されると心は癒されます。
幸せな人は他の人を幸せにしていきます。
家族関係も良好になります。
親にとってこうあるべきという妄想があると、子どもの気持ちは絶対に理解できません。

 

さて、今のあなたの悩みはなんですか?
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

TOM

酒とゴルフとお遍路が大好きな僧侶TOM。国内外のビジネスオーナーとして日々邁進中。

-僧侶のつぶやき

© 2023 僧侶のつぶやき TOMDACHI公式サイト